お子さんが発熱をすると心配になりますね.正しい知識を持っていれば,不要な心配は減ります.診察室でのお尋ねから,気付いたことを記します.熱についての誤解が結構あるようですね.

1.熱が出ると頭がバカになる→×

医学的には,体温が42°Cを越えないと脳細胞は破壊されません.インフルエンザなどで「高い熱が出た!!」と騒いでみても,最高体温はせいぜい40°Cを少し越えたくらいです.夏風邪のヘルパンギナ,急性扁桃炎などでも高熱は出ますが,せいぜい40°C前後です.インフルエンザや風邪などで体温が42°C以上になることは通常はないので,「熱が出ると頭がバカになる」ことはありません.

ただし,熱中症で体温調節能が破壊されたり,インフルエンザ脳炎で体温中枢が壊れてしまった場合には,体温が42°Cを越えたり,脳細胞に障害が起こります.このような状態では,症状は発熱だけではなく,痙攣や意識障害を伴いますので.誰の目から見ても異常が分かります.

なお,インフルエンザでは脳炎が起こることがありますが,高熱が続くから脳炎になるわけではありません.インフルエンザまたはインフルエンザ脳炎が発症した結果として発熱が生じますので,「熱が出ると頭がバカになる」わけではありません.

2.熱を下げた方が病気が早く治る→×

一般的に,熱が高いほどウイルスは不活化しやすいと言われています.インフルエンザや風邪などでは熱が出ますが,これは生体の防御機構が働いているためです.熱が高い方が病気の治癒には有利に働くことがあります.したがって,熱を下げたから病気が早く治るわけではありません.

3.麻疹(はしか)では熱を下げてはいけない→×

麻疹では高熱,発疹などが起こります.麻疹は医学の進歩した現在でも,死亡率が高い病気です(日本では1年間に50-100人は死亡しています).麻疹にかかると肺炎を起こして,その経過中に急性循環不全を起こすことがあります(「内攻」と呼びます).急性循環不全が起こると,からだじゅうに出ていた発疹がスーと消えて真白な肌になり,熱が下がって来て,心臓がパタッと止まって死亡します.御老人のなかに,「麻疹では熱を下げてはいけない」と言う方がおられますが,上記のような急性循環不全の経過を「熱が突然下がると死亡することがある」→「熱を下げてはいけない」と昔は考えてしまったのだと思います.