インフルエンザは恐ろしい病気です.インフルエンザをただの風邪だと思っているのは,何かと危機意識が欠如している平和ボケの日本人だけです.毎年,多くの人が脳炎や肺炎にかかって亡くなります.インフルエンザの流行状況にもよりますが,毎冬,インフルエンザ脳炎で全国で100-200人,新潟県では10人くらいの子どもが死亡しています.インフルエンザが流行した年には,肺炎などでお年寄りの死亡が増えるので,死亡率が高くなることが知られています.命にかかわらない場合にも,高熱などの症状が5-7日間続き,学校や仕事などを休まないといけなくなります.インフルエンザを予防する唯一の方法はワクチンを接種しておくことです.

現在,A型インフルエンザにはシンメトレル,A・B型インフルエンザにはリレンザ,タミフルが治療薬として認可されています.昨年来「インフルエンザには治療薬があるからワクチンを接種しなくてよいのか?」という御質問を受けますが,この認識は明らかに間違っています.

子どものインフルエンザの合併症で最も恐いのは,急性脳症,急性脳炎です.インフルエンザワクチンを接種しておけば,あらかじめ抗体が出来ているので,重症化を防ぐことが可能です.脳症,脳炎は急激に訪れます.私が大学病院に勤務していた時に経験した症例で最も激烈だったものは,発熱後30時間で痙攣,出血,ショックを来して死亡した3歳のお子さんでした.昨日までピンピンしていたお子さんが,眼の前で血を吐いて亡くなりました.急速にインフルエンザウイルスがからだにまわってしまって,生体の防御機構が働くのが間に合わなかったのです.インフルエンザ脳症のうちの「出血性ショックを伴う急性脳症」でした.

シンメトレル,リレンザ,タミフルが有効と言っても,病気になったことを自覚してから服用を開始して,このような急激なウイルス増殖を阻止し,合併症予防を行なうことはできません.

ひと冬,自腹を切って,リレンザを吸い続ける,タミフルを飲み続ける財力,気力,根気があれば話は別ですが(当然保険適用はありません),それは到底不可能なことです.シンメトレルは容易に耐性獲得をしてしまうので,長期服用でインフルエンザ予防などは不可能です.シンメトレルは20年以上前からアメリカでは施設内感染,接触後感染の予防に使用されています.リレンザ,タミフルも日本に先立って治療に使用されています.しかし,インフルエンザワクチンにまさるような予防効果はありませんし,このような使い方はされていません.怪我をする前に危険を回避すれば痛くはありません.しかし,怪我をしてから治療をしても痛いものはやっぱり
痛いのです.抗インフルエンザ薬の効果を過評価して,ワクチンを接種しないという認識は明らかに間違っています.

インフルエンザワクチンは2回の接種が必要です.1回目と2回目の間隔は1-4週間です.13歳以上の方は1回でも効果があります(受験生などで十分な免疫獲得を希望される場合には2回接種をお勧めします).インフルエンザは毎年12月下旬から流行が始まります.接種後の抗体上昇に最低1週間かかりますので,10-11月,遅くても12月中には接種を済ませておきましょう.1回3500円です.

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