狂牛病のウシが千葉県で発見されてから1カ月が経過しました.新聞,テレビ等で,化粧品や医薬品の一部にウシを原料とするものがあることが報道されました.ワクチンにもウシが使用されているものがあるという報道がありましたので,ワクチンメーカーに直接訊ねてみました.今回,その詳細を御報告します.

ワクチンのなかにはゼラチンを含むものがあります.ワクチンの安定化剤として用いられています.ゼラチンは異種蛋白でアレルギー反応を惹起することから,近年はワクチンから除去するメーカーが増えて来ました.現在,ゼラチンの含まれているワクチンは,北里研究所の麻疹,おたふく,日本脳炎ワクチン,化血研の狂犬病ワクチン,阪大微研のB型肝炎ワクチン,デンカ生研の日本脳炎ワクチン,日本ポリオ研究所のポリオワクチンだけとなりました.これらのうち,デンカ生研の日本脳炎ワクチンにはウシ由来のゼラチンが使用されていますが,狂牛病非汚染国であるアメリカおよびオーストラリアのウシが使用されています.これ以外のワクチンに含まれるゼラチンは全てブタ由来です.したがって,ゼラチンについては狂牛病とは無縁ということになります.御安心ください.当院ではお子さん方の安全を考慮して,これらゼラチン
を含むワクチンは原則として使用していません(ただし,ポリオワクチンは日本ポリオ研究所の独占製造で他社品はありませんので個別接種を希望される方には使用しています).

ワクチン製造の初期段階では細菌やウイルスを培養する必要がありますが,培地にウシ由来の血液や肝臓が使用されています.これらの成分を使用せずにワクチンを製造することは技術的に不可能です.狂牛病の危険部位とされている脳,眼球,小腸先端などは使用されていないので,この時点で安全ということになります.たとえまかり間違ってプリオンが混入したとしても,数段階あるワクチン製造過程でどんどん薄まり,最低でも10の6乗以上に希釈されます.例えば,3種混合ワクチンの最終製品では280億分の1にまで薄まっています.日本では1年間に120万人の子どもが接種を受けており,1人4回(I期初回3回+追加1回)の接種を受けます.280億分の1という数字は,(まかり間違ってプリオンが混入したと仮定して)この状態で日本で接種を続けても5800年に1例しかプリオンの感染が起きないというもので,極めて低率です.ワクチンメーカーの多くは自社の農場でウシを飼育しており,肉骨粉が使用されていないので,狂牛病に汚染されている可能性はまずないと考えていいようです.念を入れて,厚生労働省は「製造工程で用いるウシ由来原料を可及的速やかに(遅くとも平成14年3月29日までに)安全な原料(狂牛病非汚染国のもの)に切り替えること」をワクチンメーカーに指示しました.

上記の理由により,現在,日本で用いられているワクチンは安全であることが確認されています.