2000年秋,旧厚生省は「結核非常事態宣言」を出しました.「えっ,今どき,結核なの?」という感想を抱く方が多いと思いますが,実は日本は結核患者はかなり多いのです.欧米諸国より罹患率が高く,東南アジア諸国よりは低いという程度で,結核予防については中進国です.

現在,日本では1年間に新規登録患者が43000人,死亡例が3000人,塗沫陽性者
が14500人,小児例が280人ほど発生しています.

小児結核は,成人型結核と乳幼児型に分類されます.成人型(7歳以上)では,肺に結核菌感染が起こると周囲にリンパ球,マクロファージなどの防御細胞が集まり,結核腫(結核菌と防御細胞の集合体)を形成し,その後乾酪壊死になって自壊し(結核腫がクシャクシャになって壊れる),気道と交通して空洞になります.一方,乳幼児型(0-6歳)では,結核腫を形成しても,免疫能が未熟でリンパ球やマクロファージが十分に働かず,乾酪壊死には陥らず空洞になりません. とくに,2歳未満では,結核菌が血行性に播種して(=散らばって),粟粒結核(肺全体に結核菌がパッーと拡がる)や結核性髄膜炎(頭に結核菌がまわる)になります.粟粒結核や結核性髄膜炎は死亡率が高く,助かっても後遺症が残ることがあり,乳幼児にとっては極めて重篤な病態です.

小児結核には上記の2型が混在しており,成人の結核とは相違があります.病型別には,7歳以上では,空洞型が47%,非空洞型が38%,肺門部型が15%を占め,空洞型が最多です.一方,0-6歳では非空洞型が63%,肺門部型が37%で,空洞型はありません.さらに細かくみると,2-6歳では非空洞型(つまり結核腫)が,0-1歳では粟粒結核や結核性髄膜炎が最多です.検査所見では,7歳以上では白血球増多,血沈亢進,CRP陽性を示しますが,0-6歳では陽性を示すのはそれぞれ40%,40%,30%に過ぎません.また,塗沫および培養検査で結核菌が検出されるのは7歳以上では69%ですが,0-6歳では僅か8%です.

このように,小児結核は年齢によって,病型,検査所見,臨床症状などにかなりの違いがあります.最近は0-1歳の患者比率が上昇し,粟粒結核や結核性髄膜炎で発見されることが多いようです.家族内感染,とくに父母,祖父母からの感染が多くなっています.

日本では結核予防の中核はBCG接種です.しかし,小児におけるBCGの予防効果は,肺結核に対する効果は評価不能,粟粒結核や結核性髄膜炎に対しては86%,全体としては50%と報告されています.

小児結核患者のBCG接種歴を調べると,7歳以上では44%が,2-6歳では67%が,0-1歳では85%がBCG未接種です. BCG接種を行っていれば,これらのお子さんは結核にならずに済んだ可能性があります.とくに,0-1歳では粟粒結核や結核性髄膜炎などの重症結核になることが多く,BCG接種を乳児期早期に実施する必要があります.

現在,BCGは,主に集団接種で実施されています.人口の多い市部では,毎月接種を受けられる機会があります.しかし,小さな町村では1年に1度しか接種機会がなく,体調が悪くてこれを逸すると,2-3歳になってもBCG未接種などという事態が現実に生じています.

新潟県内では田上町でBCG接種が個別化されています.接種率はほぼ100%です.ほかの予防接種と同様に,かかりつけ医で体調のよい時に接種を受けられるという利点があり大好評です.BCG接種の有効性は接種技術に左右されることは既に明らかにされています.被接種者が接種者,接種時期を自由に選択できる体制が本来の姿です.

来年度には結核予防法が改正される予定です. BCG接種がいつでもどこでも受けられる体制を望みます.