今年の秋は,例年になく,気管支喘息の患者さんが多いようです.

気管支喘息のお子さんでも,普段から抗アレルギー剤(インタール)やステロイド(ベコタイド,アルデシンなど)の吸入,テオフィリン製剤(テオドール,スロービットなど)の内服をきちんとしている方は発作を起こさないか,起こしても軽い発作で済んでいるようです.

半年前に一度軽い発作が起きたことがある,過去に発作を起こしたことがあるがここ数年はなかった,継続的治療が必要なのにさぼっていたお子さんなどが,発作を起こして受診されています.

さて,気管支喘息を治療する上で,「この子の喘息は治るのですか?それはいつですか?」という質問を受けますので,気管支喘息の予後について述べます.

一般的には,“成人の気管支喘息”は治癒することが少なく一生おつき合いする病気と理解されています.一方,“小児の気管支喘息”は思春期までに7-8割は治癒すると言われています.

典型的なアレルギー性疾患児の場合には,乳児期後半に皮膚がカサカサ,ジクジクして“アトピ-性皮膚炎”を発症し,3歳前後からゼイゼイが始まって“気管支喘息”と診断され,7-10歳頃から鼻がグチュグチュして“アレルギー性鼻炎”になってしまいます.これを,“アレルギーマーチ”と呼びます(最近では,アレルギ-性鼻炎の低年齢化などが指摘されており,必ずしも年齢などはこの限りではありません).

このように,単独あるいは複数のアレルギ-性疾患が小児期に出現します.この過程で気管支喘息は成長とともに自然に治癒することがあり,これを“outgrow(英和辞典では「成長とともに脱する」と訳されています)”と呼びます.“Outgrow”がどのようなメカニズムで起こるのか,どのようなお子さんに起こるのか,何歳で起こるのかなどは,現在研究されていますが,未だ解明はされていません.
最近では,気管支喘息の発作を起こすと気道粘膜に炎症が起こってしまい,これを繰り返すと粘膜がドンドン荒れて次ぎの発作を起こしやすくなると解されています.10年以上前は,気管支喘息の治療薬もよいものがなく,吸入療法も普及していませんでした.また,前述した「気道粘膜の炎症説」という概念も一般的でありませんでした.喘息の発作を起こした時だけ治療することが多く,その結果,どんどん悪化して,難治性の気管支喘息になり,成人期以後に持ち越すことが多かったのです.

これらの事実を考えると,「発作時だけ治療するのでは不十分である」「発作をなるべく起こさないように積極的に治療する」「小児期にガッチリと治療をして成人期以後まで気管支喘息を持ち越さない」という方針が正しいということになります.

「この子の喘息は治るのですか?それはいつですか?」という御質問には,「(Outgrowのメカニズムなどが解明されていないので)残念ながら医学的には確実なことは言えない.」というのが正直なお答えになります.

気管支喘息という病気について安易に考えずに,小児期からきちんと治療を受けることをお勧めします.実は,これこそが,気管支喘息と早く決別できる唯一の方法なのです.