現在,日本では,予防接種法により麻疹,風疹,3種混合,2種混合,日本脳炎,ポリオワクチンの,結核予防法によりBCGの接種が小児に対して行なわれています.日本で子育てをしていると上記のワクチンだけを接種すれば十分と考えがちですが,ほかにもワクチンはたくさんあります.

最近は,流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)ワクチンが普及して来ました.流行性耳下腺炎は髄膜炎や難聴を引き起こすことが知られています.髄膜炎に罹患すると激しい頭痛や嘔吐に襲われ,2-3週間の入院が必要になります.学校健診で発見される難聴には,過去の流行性耳下腺炎罹患時の聴神経障害が原因であるものがかなりの数含まれていると指摘されています.

水痘(みずぼうそう)ワクチンも普及して来ています.水痘は重篤な合併症や後遺症はそれほどありませんが,化膿するとあばたになってしまうことがありますし,治療薬のアシクロビルはかなり高価です.

流行性耳下腺炎にしろ水痘にしろ,罹患すれば5-7日間くらい学校や保育所を休まないといけませんし,2-3回の通院が必要になります.こうしたことを考えると,これら2つのワクチンは是非接種を受けた方がよいでしょう.当院でも接種を希望される方が増えて来ています.

日本では普及していませんが,今後導入が期待されるワクチンがいくつかあります.

インフルエンザ菌(Hemophiles influenza)(冬に流行するインフルエンザウイルスと名前は同じですが,インフルエンザ菌は細菌なので全く別物です)のうちtypeb(Hib)は髄膜炎を起こし,死に至ったり,適切な治療をしても後遺症が残ることがあります.日本では5歳以下10万人あたり9-10例の罹患があることが知られています.
アメリカ合衆国ではこの数倍の40-69例の罹患があったために,1990年よりHibワクチンの接種が乳児期に組み込まれました.この結果,現在では髄膜炎は5歳以下10万人あたり1例以下に激減しています.Hibワクチンはアメリカ合衆国のみならず世界的に普及しており,日本でも接種を受ける機会が与えられるべきと考えます.

肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は髄膜炎,敗血症,肺炎,中耳炎などを起します.近年,薬剤耐性菌の増加により治療に難渋することが多くなって来ました.日本では23価肺炎球菌多糖体ワクチン(ニューモバックス)が使用可能ですが,肺炎球菌感染症の好発年齢である2歳未満には接種できないため普及していません.最近,7価および11価の多糖体ワクチンが開発され,7価のものはアメリカ合衆国で使用可能になり,2歳未満にも接種できるようになりました.現在,さらに改良された肺炎球菌ワクチンが研究・開発されています.

上記以外もワクチンはたくさんあります.日本でもさまざまなワクチンの接種が受けられるような環境が整備されることを望みます.