医師ではないものが実施し,効果や効能が確立されているわけでない治療法を「民間療法」と呼びます.

アトピ−性皮膚炎には様々な民間療法があります.こどもの病気のなかで,こんなに数多くの民間療法がある疾病は他にありません.

10-30歳代の504人のアトピ−性皮膚炎の患者さんに,「民間療法」についてのアンケート調査が行われました.37%が民間療法の経験有り,63%が経験無し,と回答しました.民間療法の経験のある患者さんのうち,23%が民間療法で良くなった,60%が変わらない,15%が悪くなったと回答し,2%が無回答でした.民間療法の種類別にみると,温泉療法の経験のある47人では34%が良くなった,58%が変わらない,6%が悪くなったと回答し,2%が無回答でした.
深海水(5人)ではそれぞれ20%,80%,0%,0%,
強酸水(32人)では19%,56%,22%,3%,
SOD様食品(45人)では22%,62%,7%,9%,
美肌水(48人)では19%,51%,17%,13%,
還元水(9人)では22%,67%,11%,0%,
対葉豆(12人)では17%,50%,25%,8%,
エステ(12人)では17%,41%,25%,17%でした.

民間療法について概ね20%の患者さんが良くなったと回答していますが,はたして本当に効果があったのでしょうか?アトピ−性皮膚炎の患者さんに偽薬(効果がないと分かっているニセ薬,プラシーボと呼びます)を服用してもらい(医師も患者さんも偽薬であることは知らされていません.ダブルブラインドテストと呼びます.),その効果を判定したところ,20%の患者さんが良くなったと回答しています.民間療法は偽薬と同じ程度の効果しかない,つまり気休めに過ぎないということになります.

民間療法の多くはスキンケア(=肌の手入れ)を目的としたものです.スキンケアであれば,1日に3回,お風呂かシャワーで石鹸をたっぷり使ってからだを良く洗い,その後保湿剤をきちんと塗ると効果があります.どんな民間療法よりも,このほうが安価で効果が高いでしょう.

民間療法のなかでも,患者さんによっては効果のあるものもあるでしょう.温泉につかれば肌がスベスベすることがあります(ただし,熱い温泉ではからだが火照って痒みが増すので逆効果です).海水浴をすれば皮膚の表面のブドウ球菌が減るので肌のジクジクが軽快することがあります(ただし,傷のある皮膚の場合にはしみるので逆効果です).しかし,多くの民間療法は,前述した通りに,偽薬と同じ程度の効果しかなく,しかも高価で,なかにはかえってアトピ−性皮膚炎を悪化させるものもあります.

さて,アトピー性皮膚炎の患者さんは,なぜ民間療法に走ってしまうのでしょうか?
これには,次ぎのような理由が考えられます.(1)アトピ−性皮膚炎はいつまでも治らないのでジレてしまう,(2)病気の首座が誰の目にも見える皮膚であり,医師でなくても疾病判断が可能と勘違いしてしまう, (3)皮膚の病気なのでちょっとやそっとのことをしても生命にかかわることはないと思ってしまう,(4)マスコミの間違った情報に影響されてしまう,などです.

最近では民間療法が盛んになり,「アトピービジネス」と呼ばれるまでになっています.数十万円の器械や高価な食品を売りつけたり,宗教がらみだったりするものもあるようです.「これを使えば必ず治ります.」という言葉とともに,何かを売りつけるような素振りがあれば,要注意です.抗アレルギー剤,抗ヒスタミン剤,ステロイド外用薬,保湿剤を医師の管理下のもとで適切に使用し,スキンケアを実行すれば,アトピ−性皮膚炎と上手に付き合うことが可能です.くれぐれもおかしなものに引っ掛かって,無駄なお金を使わないようにしてください.