2001年秋に予防接種法が改正されました.インフルエンザが2類感染症と定義され,65歳以上の老人には一部公費負担でインフルエンザワクチンの接種が開始されました.
新潟県では接種料金は4801円に決定されましたが,本人負担は1050円に過ぎません.
「ぞうさん通信」で既に報告済みですが,大変残念なことに,小児に対するインフルエンザワクチンの一部公費負担は今年度見送りになりました.インフルエンザには脳炎・脳症のみならず,肺炎,中耳炎,関節炎など多くの合併症があります.乳幼児が罹患した場合には,全身状態が悪化し,検査,入院,外来での点滴などが必要になることが非常に多くあります.最近はインフルエンザに対する正しい知識が広まったので,小児でもワクチン接種を希望される方が増えて来ました.今冬も,既に多くの小児がインフルエンザワクチンの接種を受けました.小児では過去にインフルエンザウイルスに暴露された機会が少ないために,2回のインフルエンザワクチンの接種が必要です.現時点では小児に対しては一部公費負担の制度がないために,2回とも自己負担で接種せざるを得ません.

さて,それでは,実際にインフルエンザに罹患した場合はどうでしょうか?
2年前にアマンタジン(商品名シンメトレル)がA型インフルエンザの治療薬として製造承認され,薬価収載されました.小児に対してもその使用が認められています.アマンタジンはA型インフルエンザに効果がありますが, 2-3%に不眠,興奮などの副作用があります.また,A型インフルエンザウイルスはアマンタジンに対して耐性を獲得しやすく,家族内,施設内でアマンタジン投与を受けた患者から2次感染が起こった場合には,耐性株の感染が起こることが危惧されています.アメリカ合衆国ではアマンタジンの投与は施設内感染の予防に限られて使用されており,日本のように不特定多数の患者に使用されていません.
欧米諸国では既に数年前からA型およびB型インフルエンザに対してオセルタミビル(商品名タミフル)が認可され,実際に使用されています.オセルタミビルは効果が高く,副作用が少なく,耐性獲得が理論上起こり得ないことが知られています.日本では,成人に対しては既に2000年12月に製造承認がなされ,2001年2月から薬価収載,販売開始がなされています.一方,小児に対しては,2002年1月に製造承認予定,2002年4月に薬価収載,販売開始予定で,今冬のインフルエンザ流行時には成人には使用できますが,小児には事実上使用できません.
アマンタジンは20年以上前に開発された薬剤で,極めて安価です.一方,オセルタミビルは近年開発された薬剤で,高価です.

現在,政府内では医療制度改革が論議され,今年度2次補正予算の必要性,来年度予算のあり方が討議されています.オセルタミビルの小児に対する使用が年度明けの4月にずれ込み,今冬のインフルエンザ流行に対して事実上使用できないのは,今年度予算を食われたくないという政府の意向があるためです.
間もなくインフルエンザの流行がやって来ます.65歳以上の老人にはインフルエンザワクチンの一部公費負担が実施され,成人に対してはオセルタミビルの使用が認められています.ところが,小児にはインフルエンザワクチンの一部公費負担もなく,オセルタミビルの使用も認められていません.

同じ日本国民でありながら,インフルエンザについては,老人は予防も新薬も公的に手厚く面倒をみてもらえます.しかし,小児はこれらのいずれの恩恵も被ることができません.インフルエンザという命取りになりかねない疾病に裸で立ち向かえと言われ,挙げ句の果てに将来の膨大な国債償還を背負わせられ,その一部は今冬の老人に対するインフルエンザワクチン,成人のオセルタミビルの公費負担分に費やされるのです.

日本では「いつも子どもは後回し」です.いつまでもこんなことを続けていいわけがありません.日本の将来を担うのは,私たちのような大人では決してありません.現在の子どもであり,まだ生まれて来ていない子どもたちなのです.