福島県に相馬地方(人口約5万人)というところがあります.福島県の浜通り(太平洋に面している海岸部)の北部に位置しており,宮城県と接しています.阿武隈山地があるため,北の宮城県,西の福島市,南の磐城地方と隔絶しており,患者さんは他地域の医療機関を受診することはまずありません.相馬地方には公立相馬病院があり,ここには3人の小児科医が勤務しています.開業小児科医は皆無で,相馬地方の子どもは病気をするとほとんど全て公立相馬病院を受診します.

2000-2001年シーズンに,公立相馬病院でインフルエンザ流行状況と熱性痙攣の発生頻度の調査が行なわれました.この結果,インフルエンザの推定罹患率は,0-6歳では8.1%,6歳以上では1.5%でした. ひと冬だけの調査にもかかわらず,このような高い罹患率を示しました.さらに,インフルエンザ罹患者で熱性痙攣の推定発症率を検討したところ,0-6歳では5.8%,6歳以上では5.6%でした.6歳を過ぎるとインフルエンザの罹患率は低下していましたが,一旦インフルエンザに罹患した場合の熱性痙攣の発症率は年齢にかかわらず5-6%と一定でした.日頃診療をしていると,6歳を過ぎると熱性痙攣の発症は格段に減少するという印象を持っていましたが,これはインフルエンザをはじめとする熱性疾患の罹患率が低下するためで,決して熱性痙攣そのものの発症率が低下している訳ではありませんでした.

2000-2001年シーズンはA香港型がほとんど流行せず,最近の10年間ではインフルエンザの患者発生が最も少ない年でした.もし,インフルエンザとくに変異の大きなA香港型の大流行した1997-1998年シーズンに同様の調査が行なわれていれば,インフルエンザの罹患率,熱性痙攣の発症率はもっと高くなっていたものと推測されます.

今回の調査は患者移動のほとんどない地域で綿密に行なわれたので,十分に信頼できるものです.インフルエンザの患者発生が少なかったシーズンでさえも, 0-6歳で8.1%という高い罹患率を示したのには驚きを覚え,インフルエンザワクチンの重要性を再認識しました.とくに熱性痙攣の既往のあるお子さんは,たとえ6歳を過ぎても,インフルエンザワクチンを接種すべきと考えました.