2002年2月19日,世界保健機関(WHO)は大阪市で結核対策国際会議を開き,「BCGの接種は乳幼児期に1回だけ」にするように勧告しました.

日本では現在,結核予防法で,ツベルクリン反応が陽性にならない限り,BCGは0-4歳,小学1年,中学1年の時などに最高5回接種することになっています.BCGは弱毒菌を使った生ワクチンで,乳幼児期の肺結核(とくに粟粒結核)や結核性髄膜炎の予防に効果があります.日本ではほとんどの子どもが2回以上受けていますが,複数回接種すれば効果が高まるのか疑問視されてきました.従来から,小学校,中学校でのBCGの追加接種は,肺結核を減少させる効果はないのではないかと言われてきました.

WHOは1995年に「BCGの再接種が有効という証拠はない」と指摘しています.今回の会議では,BCGを乳幼児期の1回接種だけにした韓国とシンガポールが「患者数が増えたという統計は出ていない」と報告しました.1995年に1回接種に切り替えたフィンランドでも若年者の結核患者数は増えていません.WHOの専門家グループは,BCG接種は乳幼児期には100%接種すべきだが,小中学校での再接種は中止すべきであり,無駄なコストを使わずに他の結核対策に予算を回すべきだと指摘しました.西太平洋地域では香港が2000年に,シンガポールが2001年にBCGの再接種を中止しています.域内の37カ国の中でBCGを複数回接種しているのは日本だけで,今回の勧告は実質上日本に向けられたものです.

無用なBCG接種を継続している場合には,どのようなデメリットがあるでしょうか?

BCGの効果は10数年間持続しますが,再接種するとブースター効果が起こります.この場合,いざ結核菌に感染したかどうかをツベルクリン反応で検査しようとしても,BCG再接種のためにツベルクリン反応が強陽性になってしまうので,感染しかたどうかの判断ができなくなります.

過去のBCG接種で結核菌に対する免疫を獲得しても,ツベルクリン反応がすべて陽性になるとは限りません.現在は一律にツベルクリン反応が9mm以下のものにはBCG接種をしていますが,このなかには実際には免疫を獲得しているものが相当数含まれています.免疫を持ったものにBCGを再接種すると,過剰反応が起きてしまい,BCG接種部位が真っ赤に腫れ上がり,痒くてたまらない状態になります.中学生でよく見られます.本来はツベルクリンの2段階法などで詳しく検査をしてBCGの必要性を吟味すべきなのですが,現在の集団接種ではこのような対応は不可能です.

現在,厚生労働省は小中学校でのBCG接種の中止を検討しています.今回のWHOの勧告により中止の方向に進むでしょうが,無用なBCGの再接種は早くやめるべきと思います.