2019年12月,当院周辺ではA型インフルエンザが流行しています.突然の高熱,頭痛,咽頭痛で発症し,その後に咳や鼻汁などが出現する場合が多いようです.関節痛の訴えは少なく,中耳炎や肺炎の合併もほとんどありません.熱性痙攣などの神経症状を呈する例はまれです.抗インフルエンザ薬は,ほとんどの症例でよく効いています.

当院におけるインフルエンザの取り扱いは以下の通りです.

無熱時(小児では37.5℃未満) には,インフルエンザ迅速検査を保険診療で行うことはできません.このような場合には健康診断と同じ扱いのため,全額自費になります.ご注意ください.

微熱(38℃未満)の場合には,原則としてインフルエンザ迅速検査を行いません.迅速検査はウイルス量がある一定のレベル以上に増えないと,陽性を示しません.多くの場合,高熱が出現してから早くても6-7時間,通常は12時間以上経過しないと陽性を示しません.インフルエンザ迅速検査は,保険診療上,「1エピソードについて発熱後48時間以内に2回まで」「同日の再検査は不可」「最終検査から1週間以内の再検査は不可」となっていて,その使用には制約があります.例えば,月曜日に37.9℃でインフルエンザ迅速検査陰性(保険適用),火曜日に38.5℃でインフルエンザ迅速検査陰性(保険適用)で,水曜日に39.0℃でインフルエンザ迅速検査陽性の場合には全額自費(再診料+検査料+薬代など)になり1万円以上の支払いが必要になります.混合診療は禁止されているので,インフルエンザ迅速検査だけ自費扱いにすることは認められていません.むやみに検査を受けると,本当にインフルエンザに罹患した時に困ります.十分ご注意ください.

インフルエンザと診断した場合には,抗インフルエンザ薬を処方します.タミフル,イナビル,リレンザ,ラピアクタは剤型や投与回数に違いがありますが,全てノイラミニダーゼ阻害薬で作用機序は同一です.当院では,主にタミフルまたはイナビル吸入粉末剤を処方しています.タミフルにはドライシロップとカプセルがあり,全年齢層で使用が可能です.ただし,1日2回,5日間,合計10回の内服が必要です.イナビル吸入粉末剤は,概ね5歳以上で使用が可能です.単回吸入で済むので便利ですが,吸入手技に影響されます.イナビル吸入粉末剤の処方量は10歳未満では1キット,10歳以上では2キットで,10歳を境に2倍になります.身体の大きな8-9歳児あるいは上手に吸えない場合には,十分な効果を発揮できないことがあります.イナビル吸入懸濁用の使用には,ネブライザーが必要です.自分自身では吸入ができない乳幼児や老人用に開発された製剤です.乳幼児が泣き叫んだ状態で無理矢理吸入しても,吸入液は肺に入らずに胃袋に入ってしまうので無効です.リレンザは1日2回,5日間,合計10回の吸入が必要で,イナビル吸入粉末剤に比べ利便性が劣ります.ラピアクタは注射製剤のため,治療の第1選択にはなり得ません.

インフルエンザ罹患後には,登校許可証が必要になります.いつから登校してよいかは,発熱日,解熱日,年齢により異なります.体温を1日3回程度計測し,熱型表に記入して登校許可証とともにご持参ください.熱型が不明では,登校許可証を書くことができません.ご注意ください.

今シーズンは,例年よりもインフルエンザの流行が1カ月半程度早くやって来ました.このため,インフルエンザワクチンの接種が間に合わなかった方が数多くいるようです.流行のピークが年末年始になりそうだ,流行規模が大きくなるのではないかという予測もあり,今後の展開に注意が必要です.