魚介類の摂取により,アレルギーを発症することがあります.この場合,原因としては,(1)魚介類に対するアレルギー,(2)アニサキスに対するアレルギー,(3)ヒスタミン中毒,があります.

(1)魚介類に対するアレルギー
魚類では,イクラに対するアレルギーが最多で,次にロブスターが多く,これらにカレイ,タコ,アジ,タラ,タラコ,イカ,エビ,イワシ,カニ,サケ,マグロ,サバが続きます.貝類では,ホタテに対するアレルギーが最多で,次にアサリが多く,これらにカキ,ムラサキガイが続きます.

魚類の主要アレルゲンは,パルブアルブミンです.魚類間での相同性が高く交差抗原性が認められるため,複数の魚にアレルギーを持つ場合があります.ただし,パルブアルブミンの含有量は,魚種や部位によって異なります.イクラの主要アレルゲンはヒドロジェニンのβ’-コンポーネントで,タラコと交差抗原性があります.甲殻類,軟体動物,貝類の主要アレルゲンは,トロポミオシンです.エビとカニでは85-95%の高い相同性があるため,エビアレルギーの場合には65%にカニアレルギーもあります.一方,甲殻類と軟体動物のトロポミオシンの相同性は60-70%のため,エビアレルギー患者がイタ,タコ,ホタテに対するアレルギーを経験する割合は20%程度です.

食物アレルギーの年齢別原因食品としては,1-3歳では魚卵が,7-19歳では甲殻類が最多です.回転寿司の普及により,乳幼児にイクラを食べさせて口の周りが赤くなった,蕁麻疹が出たという訴えでの受診が目立ちます.小中学生では,エビやカニのアレルギーが多く,食物依存性運動誘発アナフィラキシーを起こすことがあり注意が必要です.

(2) アニサキスに対するアレルギー
アニサキスは,サバ,タラ,イカなどの海産魚介類に寄生する寄生虫です.アニサキスアレルギーは,アニサキスが寄生している魚介類を摂取することにより,蕁麻疹やアナフィラキシーなどのアレルギー症状を引き起こします.魚介類を頻回に摂取するうちにアニサキスに感作されます.このため,アニサキスアレルギーになっても気付かず,問診をしても分からないことが多く,診断が困難です.

血液検査によるアニサキスIgEの陽性率は,イクラやホタテなどの魚介類よりも高く,特に成人における魚介類アレルギーが疑われる場合には,魚介類そのものに対するアレルギーではなく,寄生虫のアニサキスに対するアレルギーであることが数多く報告されています.

アニサキスアレルギーは,魚介類の生食だけでなく,魚肉ソーセージやかまぼこなどの加熱処理をした加工品の摂取でも起きます.アニサキスには,熱に安定な主要アレルゲンが存在するからです.アニサキスアレルギーでは,摂取直後から数時間後に症状が起こることがあり,一般的な食物アレルギーに比べて摂取から症状発現までの時間の幅が大きいという特徴があります.複数の種類の魚介類の摂取でアレルギー症状が出現する,今まで食べても平気だった魚介類でアレルギー症状が突然出現する場合には,アニサキスアレルギーが疑われます.アニサキスアレルギーでは,一般の食物アレルギーに比べて,吐き気,嘔吐,下痢などの消化器症状,蕁麻疹や血管性浮腫などの皮膚症状が多い傾向を示します.

アニサキスアレルギーの診断には,血液検査によるアニサキスIgEの測定が有効です.

(3)ヒスタミン中毒
サバ,カツオ,イワシ,マグロなどの赤身の魚の筋肉中にはヒスチジンという物質が多く含まれています.これらの魚を常温下に置いておくと,魚の表面に付着したヒスタミン合成酵素を持つ細菌が増殖し,魚の筋肉中のヒスチジンからヒスタミンが生成されます.摂取したヒスタミンが,吐き気,腹痛,下痢,蕁麻疹などのアレルギー様症状を起こします.これをヒスタミン中毒と呼びます.ヒスタミン中毒は,(1)(2)のようなIgEを介したI型アレルギーとは異なります.

魚介類のアレルギーがご心配な方は,当院にご相談ください.適切に診断します.