2020年1月17日,厚生労働省健康局長は各都道府県知事にロタウイルス胃腸炎予防ワクチン(ロタワクチン)が,2020年10月1日より定期接種化されると通知しました.定期接種の対象者は,2020年8月1日以後に生まれた者に限られます.

小児の感染性胃腸炎の原因はウイルス性のものが多く,ロタウイルス,ノロウイルス,アデノウイルスなどが病原体として知られています.検出頻度はそれぞれ60-70%,20-25%,8-9%で,ロタウイルスが最多です.

ロタウイルス胃腸炎は,例年寒さが緩む2-3月頃に流行します.ときに他の季節に流行します.好発年齢は2歳以下です.母親からの移行抗体が消失する生後6カ月頃から発症します.乳児期後半以降もロタウイルスの感染は繰り返し起こりますが,重症化する確率は減ります.

主な感染経路は糞口感染で,潜伏期間は2-3日です.患者の便1g中に10の11乗個の大量のロタウイルスが存在しますが,1-10個のロタウイルスで感染が成立してしまいます.ロタウイルスは感染力が極めて強いのが特徴です.下痢出現の2-3日前から糞便中にウイルスが排泄され,その後1-2週間持続します.間接接触感染も知られていて,おもちゃや衣類などを介して感染が広がります.保育所などで毎年のように集団発生が起きています.

主な症状は,発熱,嘔吐,下痢,腹痛です.病初期に発熱と嘔吐が出現します.発熱は40-60%にみられ,通常は2日間で解熱します.嘔吐は60-90%の症例に出現し,通常2日目以後は減少し,その後下痢が始まります.下痢の性状は水様便が多く,約半数の患児に,豆腐をつぶした,あるいは紙粘土のような白色便,クリーム色便が認められます.下痢は1日数回から十数回に及び,7-14日間続きます.便が白いうちは治っていません.便の色がつき始めて2-3日してやっと治ります.一旦便が元の色に戻っても,また白い便になり,ぶり返すことがあります.1日10-20回以上の激しい嘔吐や下痢により脱水や電解質異常をきたします.一晩で高度の脱水に陥り,命にかかわることがあります.合併症として肝機能異常,痙攣,まれに脳炎・脳症があります.年長児や大人では下痢がなく,お腹が痛い,吐き気がある,食欲がないだけのこともあります.便中のロタウイルスを検出する迅速診断キットがあります.陽性の場合にはロタウイルス胃腸炎と診断します.病期を失すると陽性を示さないことがあるので,陰性でもロタウイルス胃腸炎を完全には否定できません.ロタウイルスに対する特効薬はないので,吐き気止め・下痢止めを服用して自然治癒を待たなければなりません.脱水にならないように十分な補液が必要です.経口摂取ができない場合には点滴が必要です.点滴路の確保が難しい乳児や排尿がない,目が落ち窪んでいる,ぐったりしている,皮膚に張りがないなどの重症例では入院が必要になります.

ロタウイルス胃腸炎から逃れる唯一の方法は,ロタワクチンの接種を受けることです.2004年に1価ロタワクチン(ロタリックス),2006年に5価ロタワクチン(ロタテック)が開発され,導入されました.ロタワクチンの効果は絶大です.2016年時点でロタワクチンは世界81カ国で定期接種化されています.現時点で日本ではロタワクチンは任意接種ですが,接種率は全国では70%以上,新潟県では80%以上,当院では95%以上です.高い接種率により,ロタワクチン導入前に見られたようなロタウイルス胃腸炎の大きな流行はなくなりました.

当院周辺では,2019年3月下旬から4月にかけてロタウイルス胃腸炎が小流行しました.近隣の保育所で患者の集団発生があり,その後小学生以上の比較的年長のお子さんに流行の中心が移行しました.患者のほとんどは,ロタワクチンの接種を受けていませんでした.

日本でも,ようやくロタワクチンが定期接種化されることになりました.ただし, 2020年7月31日までに生まれた者は定期接種の対象外ですので,任意接種として是非受けてください.