子宮頸がんは子宮頸部(子宮の入り口)にできるがんで,20-30代で急増し,日本では年間約15000人の女性が発症しています.子宮頸がんは初期の段階では自覚症状がほとんどないため,しばしば発見が遅れてしまいます.がんが進行すると,不正出血や性交時の出血などがみられます.子宮頸がんは,発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で引き起こされる病気です.発がん性HPVは感染しても多くの場合は一時的で,ウイルスは自然に排除されます.しかし,感染した状態が長い間続くと,子宮頸がんを発症することがあります.発がん性HPVは特別な人だけが感染するのではなく,多くの女性が一生のうちに一度は感染するごくありふれたウイルスです.発がん性HPVには15種類ほどのタイプがあります.日本人子宮頸がん患者の約60%から,HPV16型,18型の2種類の発がん性HPVが見つかっています.

子宮頸がんを予防するためには,ワクチン接種を受けるしかありません.日本では,2013年4月に,子宮頸がん予防ワクチンが定期接種化されました.しかし,接種後に,接種部位以外の体の広い範囲に疼痛を訴える症例が発生したために,同年6月に積極的な接種勧奨の一時差し控えが行われ,現在もこの状態が続いています.子宮頸がん予防ワクチンは多くの国で導入されていますが,特段の問題は発生していません.日本だけが特異な対応を行っています.

積極的な接種勧奨の一時差し控え後,子宮頸がん予防ワクチンの接種率は大きく低下し,現在ではほとんど接種が行われていません.このような状態が続けば,将来,子宮頸がんから女性の命を守ることができなくなってしまいます.日本小児科学会,日本小児科医会,日本産婦人科医会などの関係各団体は,厚生労働省に対して積極的な接種勧奨の再開を強く要望して来ました.しかし,厚生労働省は重い腰をあげようとしません.

2020年1月30日,日本外来小児科学会は以下の通りの要望書を厚生労働省に提出しました.


 

令和2年1月30日

厚生労働省健康局長
宮嵜雅則様

一般社団法人 日本外来小児科会
理事長 横田俊一郎

ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の積極的勧奨の再開に関する要望書

日頃より予防接種行政等にご尽力いただき誠にありがとうございます。

さて、ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種については、地方自治法第245条の4第1項の規定により、平成25年6月14日に「ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について(勧告)」(健発0614第1号)が貴職から発出され、積極的な接種勧奨の差し控えが6年半以上継続されています。
定期接種の実施主体である市町村においては勧告の趣旨を尊重し対応しているものと理解しておりますが、この間にヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の接種率は1%未満の状態が続いております。
このような状況の下、令和元年11月22日に開催されました厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議において、複数の委員から積極的勧奨再開に向けた意見が出されました。
ヒトパピローマウイルス感染症から若い女性の命と健康を守るためにも、当学会も積極的な接種勧奨の再開についての議論が再開されることを大いに期待しております。科学的根拠に基いてヒトパピローマウイル感染症に係る定期接種の積極的な勧奨の再開を検討していただきますことを、日本外来小児科学会として強く要望いたします。

子宮頸がん予防ワクチンは,通常,中学1年生女子が3回の接種を受けます.現在も接種を希望する場合には定期接種として接種を受けることができます.当院では接種を行っています.中学1年生以上の女子で未接種の場合には,早めに接種を受けることを強くお勧めします.