2019年から2020年にかけては,暖冬少雪でした.新潟県では雪はほとんど降りませんでした.少雪の年は過去にもありましたが,例年よりもかなり気温が高かったです.4月初旬には桜が咲き始め,中旬を待たずに満開のところもあります.

新潟県におけるスギ飛散の本格的開始は,例年3月1日前後です.暖冬少雪だったせいか,今シーズンは飛散開始がやや早かったようです.

スギ花粉症の主な症状はくしゃみ,鼻汁,鼻閉,眼のかゆみなどですが,皮膚に症状が出現することがあります. アトピー性皮膚炎患者の約30%は,スギ花粉飛散期に眼瞼炎や眼の周りの皮膚炎を起こします.スギ花粉による感作で1型アレルギーが成立し,眼瞼や目の周りの皮膚が痒くなり,発赤や腫脹を生じます.掻くことで炎症がさらに増強され,皮膚が厚くなってただれてしまいます.2-4月に多く,上眼瞼が34%,下眼瞼が19%,上眼瞼+下眼瞼が47%です.ドライスキンだけでアトピー性皮膚炎がない場合にも,眼瞼炎が出現,悪化することがあります.アトピー性皮膚炎がある場合には,眼瞼炎の出現頻度に男女差はありません.一方,アトピー性皮膚炎がなく眼瞼炎のみの場合,多くは女性です.その理由は,化粧品や化粧落としを使用するために眼瞼や眼の周りの皮膚のバリア機能が破壊されているからです.くしゃみ,鼻汁,鼻閉などの典型的なスギ花粉症の症状に乏しいことから,スギ花粉が原因であることに気付かない場合があります.対策としては,からだや衣服に付着したスギ花粉を取り除くことです.特に,髪に付着したスギ花粉をよく洗い流すことが重要です.眼瞼炎の治療にはステロイド外用薬やプロトピック軟膏を用いますが,プロトピック軟膏は再発率が低くより有効です.抗ヒスタミン薬の内服も有効です.

鼻症状や眼症状が出現してから処方を受けに来られる方がいますが,スギ花粉症では「初期療法」が推奨されています.「鼻アレルギー診療ガイドライン」では「第2世代抗ヒスタミン薬,抗ロイコトリエン薬,鼻噴霧用ステロイド薬は花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で開始し,その他の薬剤では飛散開始予測日の1週間前をめどに治療を始める.」と記載されています.スギ花粉によってアレルギー性炎症が鼻粘膜や結膜で起きると発赤や腫脹が生じ,薬剤が効きづらくなります.今シーズンの治療開始が遅かった方は,来シーズンは遅くとも2月11日の建国記念日前後には処方を受け,手元に薬剤を用意して起きましょう.

スギ花粉症では,鼻症状と眼症状をともにコンロールする必要があります.鼻と眼には反射があり,相互に影響を及ぼします.内服薬で効果不十分な場合には,鼻噴霧用ステロイド薬で鼻症状を,点眼用抗ヒスタミン薬で眼症状を,ともにコントロールしないといけません.

3-4月に鼻症状や眼症状があると,スギ花粉症と自己診断してしまうことがあります.血液検査をしてみるとスギ特異的IgEは陰性で,スギ花粉症ではない場合があります.このような症例では,ハウスダストやダニの通年性アレルギー性鼻炎であることが多いのですが,なかにはシラカンバやハンノキなどの初夏の花粉症や,イネ科雑草による夏の花粉症の場合があります.例年であればスギ花粉の飛散が終了する4-5月から初夏や夏の花粉症が始まりますが,今年は既にイネ科雑草などの花粉が飛んでいるようです.3月末にスギ花粉症を疑って検査をしたお子さんがいたのですが,イネ科雑草だけが陽性でした.当院の駐車場や周辺でも確かに雑草が青々と繁っています.暖冬少雪の影響と思われます.