1.皮膚バリア機能

健康な皮膚にはバリア機能があり,水分の蒸発や外からの刺激を防いでいます.しかし,皮脂,天然保湿因子,角質細胞間脂質といった物質が不足して皮膚が乾燥した状態(乾燥肌=ドライスキン)になると,角層がはがれてすき間ができてしまい,外界からの刺激を受けやすくなります.保湿剤の塗布により,皮膚から水分が逃げないようになり,皮膚バリア機能が維持されます.

2.塗り方のコツ

健康な皮膚を守るためには,季節に関係なく毎日保湿剤を塗ってスキンケアをしましょう.たっぷりとまめに塗る皮膚症状が軽快しても中止せずにひたすら塗り続ける,のがコツです.せっかく塗った保湿剤も,掻いていじってしまえば落ちてしまいます.汗をかけば流れ落ちてしまいます.お風呂,シャワーに入れば落ちてしまいます.こうした場合には,すぐに塗り直しましょう.

保湿剤はたっぷり塗ってください.軟膏・クリームタイプはいつ皮膚を触っても“ペタッ”という感じ,ローションタイプはしずくが飛び散るくらいに塗って下さい.

保湿剤を塗る前には,手をよく洗いましょう.入浴後,保湿剤を手早く塗ることで皮膚の乾燥を防ぐことができます.

3.保湿剤の選択

保湿剤には,軟膏,クリーム,ローションの3タイプがあります.軟膏は皮膚への“つき”がよいですが,“べたつく”という欠点があります.ローションはさらっとしていますが,“つき”が悪く,皮膚が荒れている場合には“しみる”という欠点があります.クリームはこの中間です.

汗をかく夏や多汗部位にはさっぱりとした使用感の良いクリームやローションを,乾燥しやすい冬や乾燥の強い部位には皮膚を覆う効果に優れた軟膏やクリームを使用します.

保湿剤には好みがあります.本人の嫌がらないものを選ぶことが重要です.

4.処方薬

ヒルドイドソフト,ヒルドイドローション(もっとも使い易いが,100人に1人くらい塗布部位が赤くなることがある,薬価が高い),パスタロンソフト,パスタロンローション(薬価は高くないが,尿素製剤なので臭う,しみることがある),白色ワセリン,プロペト(安くてしみないが,べたつきが強い),などがあります.

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5.Finger-tip unit(FTU)

使用量の目安には,finger-tip unit(FTU)を用いるのが便利です.チューブから押し出した人差し指の先端から第1関節までの長さ(=約2.5cm)の軟膏(またはクリーム)が約0.5gで,これを1FTUと呼びます.ローションでは1円玉大の量が1FTUです.

1FTUが,成人の両手のひらに相当する面積の皮膚に塗る量です(図).1FTUの分量の保湿剤を5-6カ所に分けて皮膚にのせます.その後,指腹部で周辺皮膚に伸ばしてください.強くすりこむ必要はありません.

この量を塗ると,皮膚がテカテカと光るか,ティッシュが皮膚に付きます.

6.部位別の塗り方

<顔,頭>顔に保湿剤を点在させます.やさしく円を描くように伸ばします.小鼻のわきも忘れずに塗りましょう.乾燥している目や口のまわりにも保湿剤を塗りましょう.耳たぶの中は保護者の小指で塗るのがいいでしょう.耳たぶを前に倒して耳の後ろにも塗りましょう.頭皮はローションタイプがべとつかず,使いやすいです.髪の毛を分けて,指腹部を使って丁寧に塗りましょう.

<からだ>保湿剤を左右対称に点在させます.手の平をすべらせてマッサージをするように伸ばして塗ります.わきの下も忘れずに塗りましょう.

<手,足>手足の指は,保護者の親指と人差し指で軽くつまむようにして塗ります.指と指の間も忘れずに塗りましょう.うでの曲がる部分や、膝の裏側も忘れずに塗りましょう.足の甲や裏,足首のくびれも念入りに塗りましょう.

7.市販薬

花王「キュレルクリーム・ローション」,資生堂「ドゥーエ乳液・クリーム」,大島椿「アトピコオイルローション」などがいいでしょう.

8.最近の知見

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乾燥肌を放置したままにしておくと,アトピー性皮膚炎が悪化します.最近の研究では,乾燥肌やアトピー性皮膚炎では皮膚バリア機能が障害されているために,外界から抗原が体内に侵入してしまい,食物アレルギー,気管支喘息,アレルギー性鼻炎などが起こることが明らかになってきています.スキンケアはアレルギー性疾患の予防にもなります.乳幼児期から正しいスキンケアをすることは,とても大切なことなのです.