発作誘発因子

呼吸器系のウイルス感染症,とくにRS,ヒトメタニューモ,ライノウイルス,インフルエンザウイルスなどが気管支喘息の発症に関与し,発作誘発因子として働くことが知られています.

RSウイルス

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は,とくに乳幼児の細気管支炎や肺炎の原因ウイルスとして知られています.RSウイルスは,晩秋,冬,早春に流行します.流行の時期や規模は,その年によって異なります.RSウイルスに感染すると,まず鼻汁が出現し,その後に38-39度の発熱と咳が続きます.初感染の場合には,25-40%の乳幼児に細気管支炎や肺炎の徴候が見られ,0.5-2%は呼吸困難のために入院が必要になります.6カ月未満の乳児では重症化しやすく,まれに死亡することがあります.RSウイルスによる細気管支炎や肺炎で入院歴がある場合には,その後に気道過敏性の亢進が見られ,喘息発症のリスク
が高くなることが知られています.乳幼児期にRSウイルス感染症が重症化すると免疫系の発達に影響を与え,アレルギー反応が起きやすい方向にシフトするためと考えられています.また,RSウイルスに感染した場合には,強い気道収縮作用を持つロイコトリエンC4などの産生が亢進するため,喘息発作を誘発します.

ヒトメタニューモウイルス

ヒトメタニューモウイルスは,気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症を引き起こすウイルスの1種です.小児の呼吸器感染症の5-10%,成人の呼吸器感染症の2-4%は,ヒトメタニューモウイルスが原因と考えられています.好発年齢は1-4歳で,2歳までに約50%,10歳までに約100%が感染を経験します.1-2歳が発症のピークで,3歳以下が総患者数の約70%を占めます.ヒトメタニューモウイルス感染症は1年中発症が確認されていますが,3-6月にはとくに感染者が増加します.春先から梅雨の時期までは,保育園・幼稚園や小学校で流行することがあります.症状は風邪とよく似ていて,咳,熱,鼻水です.多くの場合,咳は1週間程度,熱は4-5日間続きます.65%の症例では熱よりも先に咳が出ます.解熱後も咳が続きます.経過中に,肺炎や気管支炎になることがあります.重症化すると喘息様気管支炎や細気管支炎を起こし,喘鳴や呼吸困難を生じます.

ライノウイルス

ライノウイルス(rhinovirus)は,鼻風邪の原因ウイルスとして知られています.成人の風邪の2分の1から3分の1は,ライノウイルスが原因です.ライノウイルスは春と秋に流行しますが,冬にはあまり流行しません.主な症状は頭痛,のどの痛み,鼻詰まり,くしゃみ,多量の水性鼻汁で,次第に膿性鼻汁に変化します.通常,発熱はありません.その後,軽い咳が2週間近く続くことがあります.ライノウイルスは33度でしか増殖しないため,ライノウイルスによる炎症は上気道に限局します.ライノウイルスには100以上の種類があります.ライノウイルス16型はアレルギー反応に深く関係するヒスタミンの気道に対する作用を増強します.

インフルエンザウイルス

インフルエンザウイルスにはA/H3N2,A/H1N1,B型があります.流行株,流行の時期や規模はシーズンにより異なりますが,インフルエンザは毎冬必ず流行します.突然の高熱,頭痛,関節痛,倦怠感などが主症状ですが,気管支炎や肺炎を起こし,頑固な咳が続きます.気管支喘息患者がインフルエンザに罹患すると,喘息発作が誘発されることは臨床的によく経験されます.気管支喘息患者は,毎年10月から11月にインフルエンザワクチンの接種を受けておくべきです.