なぜ,発作もないのに治療をするのか?

気管支喘息は気道(気管・気管支)が収縮して狭くなり,コンコン,ゼイゼイ,ヒューヒューを繰り返す病気です.このようにコンコン,ゼイゼイ,ヒューヒューが聞こえる状態を「発作」と呼び,気道(気管・気管支)は収縮します.発作が治まると気道(気管・気管支)が拡張して,すっかり元の状態に戻ると思っていませんか?もし,そのように思っていれば,それは「間違い」です.

最近の研究により,気管支喘息では,ダニやハウスダストなどのアレルゲン,ウイルスや細菌の感染などの刺激で,気道(気管・気管支)粘膜に「炎症」が起こることが分かって来ました.気道粘膜の炎症の結果,次の5つのことが起こり,気道が狭くなります.

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(1)気管支平滑筋の収縮:
気道の外周にある筋肉を気管支平滑筋と言いますが,これが収縮して急激に気道が狭くなり,空気の出入りが妨げられます.

(2)粘膜の浮腫:
気道の粘膜の血管から血液の成分がもれて,粘膜がむくみます.この結果,空気の出入りが妨げられます.

(3)粘液の過剰分泌:
気道にある分泌線からたくさんの粘液が分泌され,気道の中に詰まります(粘液栓と呼びます).空気の出入りが妨げられます.

(4)炎症細胞による粘膜の破損:
血液の中から粘膜に出てきた好酸球という細胞が気道の粘膜をはがしてしまいます.

(5)神経への刺激:
粘膜の細胞がはがれたために,神経が露出し,わずかな刺激(ダニ,ハウスダスト,ウイルス,細菌,たばこの煙など)にも敏感になり,気道がさらに過敏に反応するようになります(「気道過敏性が亢進する」と言います).

コンコンという咳が出る程度の軽い発作(親から見ると風邪を引いたようにしか見えない),軽いゼイゼイ(聴診器をあてないと分からない,背中に耳をあてるをやっと分かる),ひどいゼイゼイ,ヒューヒューという喘鳴(こうなると誰にでも分かる)が起こると,少なからず(1)(2)(3)(4)のように気道粘膜に「炎症」が起きて,(5)のような「気道過敏性の亢進」した状態が数週間から数カ月続き,次の発作を起こしやすくなります.発作が治まって安心して治療をしないと,(5)→(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→・・・・・と悪循環になって,気道粘膜は「炎症」のためにどんどん荒れてしまい,「気道過敏性がさらに亢進」して,気管支喘息が悪化します.いわゆる,「焦げ付いた気管支喘息」になってしまいます.このような悪循環が続くと,だんだんと気道が狭くなって来て,気道の柔軟性がなくなっていきます.

日本では小児の気管支喘息で1年間に50-100人程度が死亡していますが,非発作時に継続的な治療をしないと,ある日突然大きな発作が起こって,大変なことになる可能性があります.

気管支喘息はよく「火事」に例えられます

家の中で何かに火がついて燃え始めました.水をかけたり,消火器を使って消しますね.消さないでいれば部屋中に火がまわってしまい,ついには家全体が燃えてしまいます.最後に消防車がやって来て消火にあたります.水や消火器での消火が不十分だと,火種が残ってしまって,再び燃え始め,やっぱり家全体が燃えてしまいます.

気管支喘息は治療の継続が必要です

喘息の症状が自覚されなくても,気管支には炎症(火事)が長く続いています.一度炎症が起こると,気道が敏感になる状態は,数週間から数カ月続きます.
発作時だけ治療をするのは,時代遅れです.10数年前までは発作時しか治療していませんでしたが,その結果,[焦げ付いた気管支喘息]になってしまって,いつまでも治らなかったのです.

気管支喘息の非発作時の治療

それでは,気道の炎症を落ち着かせて,発作を起こさないために,どうしたらいいでしょうか?

(1)内服薬を続ける,さぼらない!!
◎ロイコトリエン受容体拮抗薬:
アレルギー反応に引き続いて起こる炎症や気道収縮を抑える作用があります.
◎テオフィリン製剤:
気管支拡張作用があります.最近の研究では抗炎症作用があることが明らかになりました.
抗ヒスタミン薬:
アトピー性皮膚炎,アレルギ?性鼻炎,じんましんなどを合併する場合には必要です.
◎漢方薬(柴朴湯,小青竜湯,麦門冬湯,麻杏甘石湯など):
漢方薬のなかには炎症を抑える作用を持つ成分を含むものがあります.

(2)吸入療法を続ける,さぼらない!!
◎ステロイド薬:
気管支粘膜に作用して,アレルギー反応,炎症反応を抑える作用があります.
◎DSCG:
気管支粘膜に作用して,アレルギー反応を抑える作用があります.さらに,アレルギー性炎症を抑制する作用,神経原性アレルギー反応の抑制作用など,多彩な作用機序を持っています.

非発作時の治療はどの程度になったら始めるのか?

症例によって違うので一概には言えませんが,1年間に3-4回発作を繰り返す場合,1-2回でも大きな発作があった場合には,非発作時の継続的な治療が必要になります.

非発作時の治療はどのくらいの期間続けるのか?

症例によって違うので一概には言えませんが,無発作が3カ月続いた場合に内服薬や吸入薬を減らして行きます.最終発作から2年間全く発作がない場合に治療を終了します.全ての治療をいきなりやめて発作が起こると困るので,内服薬や吸入薬は1種類ずつ減らしていきます.小さな発作,夜間の咳,動いた後の咳がある場合には,治療を継続した方がいいでしょう.