排尿機構の確立

生まれる前,つまり子宮の中で胎児は既に排尿をしています.生まれてからも,膀胱に一定の量の尿がたまると排尿をします.これを「反射性排尿」と呼びます.その後,成長とともに膀胱容量が大きくなって行きます.4歳頃になると大脳が発達し,「おしっこ」を我慢できるようになります.5歳頃になると睡眠リズムが成人とほぼ同様になり,昼寝をしなくなります.こうして「排尿機構」が確立されていき,「おねしょ」をしなくなります.

排尿の調節

1.脳の一部の下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンには,尿を濃くし尿量を減らす働きがあります.このホルモンの分泌が悪いと,尿量が増えます,

2.尿は膀胱にたまりますが,この容量が小さいとすぐにおしっこをしたくなります.

夜尿症とは?

5歳以上の小児が就眠中に尿を漏らす現象を「夜尿」と呼びます.1カ月に1回以上の夜尿が3カ月以上続くものを「夜尿症」と定義します.

日本では,5-15歳の小児の6.4%,約80万人が夜尿症と推定されています.小学校入学時で11-13%,中学校入学時で3-5%,高校入学時で1%が,夜尿症です.概ね1年で15-17%が治癒して行きます.成人の200人に1人は夜尿症という報告があり,小児だけの病気ではありません.

夜尿症の原因

(1)夜間多尿:睡眠中に抗利尿ホルモンの分泌が低下して尿量が多くなる

(2)排尿筋過活動:睡眠中に膀胱が収縮してしまう

(3)覚醒閾値の上昇:起こしても目が覚めにくい

などの複数の要因が関与して「夜尿症」が起きます.

夜尿症の分類(いくつかの分類があります.)

一次性夜尿症と二次性夜尿症

(1)一次性夜尿症(75-90%):これまでに夜尿が消失していた時期があったとしても6カ月未満.

(2)二次性夜尿症(10-25%):これまでに夜尿が6カ月以上消失していた時期があった.

*二次性夜尿症では,精神的ストレス(両親の離婚,同胞の誕生など)が関与する場合があります.また,下部尿路感染症,外傷,神経因性膀胱,睡眠時無呼吸症候群,糖尿病,尿崩症などに注意します.

単一症候性夜尿症と非単一症候性夜尿症

(1)単一症候性夜尿症(75%):下部尿路症状(排尿頻度が過多または過少,昼間尿失禁,尿意切迫,排尿開始困難,腹圧をかけての排尿,微弱尿線,断続排尿,尿こらえ姿勢,残尿感,ちびり,など)を合併しないもの.

(2)非単一症候性夜尿症(25%):下部尿路症状を合併するもの.

以前から用いられて来た病型分類

(1)多尿型:夜間の抗利尿ホルモンの分泌が低下しているために,尿を濃くできず.夜間の尿量が多くなる.

(2)膀胱型:膀胱が小さいために尿を溜めることができ図,がまん尿量が少ない.日中もおしっこが近い.

(3)混合型:多尿型+膀胱型,もっとも治りにくいタイプ.

夜尿症の治療は何歳頃から?

毎晩夜尿がある場合には6歳,週に数回の夜尿がある場合には8歳が治療開始の目安です.

夜尿症は子どもにとってストレス

夜尿症があると,子どもはストレスを感じます.治療をすることにより生活の質が上がります.

夜尿症と睡眠

夜尿症では眠りが深いために尿意を感じても目が覚めないと思われがちですが,必ずしもそうではありません.重症の夜尿症では,睡眠のリズムに乱れがあるために質が悪く,むしろ浅い眠りになっています.睡眠の質は,眠り始めの3時間で決まります.良質の睡眠には,良好な睡眠導入が必要です.寝付きが悪いと睡眠の質が不良になり,全体として浅い眠りになります.その結果,早朝の睡眠がむしろ深くなります.夜尿は朝方に多いので,目が覚めずにおしっこを失敗してしまいます.

遺伝

両親ともに夜尿症があった場合には11倍,両親の一方に夜尿症があった場合には5-7倍,児は夜尿症になりやすくなります.一卵性双生児の46%,二卵性双生児の19%が双方ともに夜尿症だったという報告があります.夜尿症には遺伝素因が関与します.

基礎疾患の有無に注意

基礎疾患があるために,2次的に夜尿を来す場合があります.以下のような基礎疾患の有無には注意が必要です.基礎疾患がある場合には,一般的な夜尿の治療をしても症状が軽快しません.

泌尿器科的疾患:後部尿道弁,尿管異所開口,膀胱尿管逆流症,機能障害性排尿,神経因性膀胱(2分脊椎)

内分泌疾患:尿崩症,糖尿病

その他:てんかん,睡眠時無呼吸症候群,注意欠陥多動性障害(ADHD),心因性多飲症

治療

夜尿症の治療では,まず生活習慣の改善を図ります.適切な夕食時間の設定,夕方から夜間にかけての飲水制限などを行います.

効果が不十分な場合には,合成抗利尿ホルモン薬であるミニリンメルトOD錠の投与や夜尿アラーム療法を行います.これらの治療で効果が不十分な場合には,抗コリン薬の追加などが行われます.

夜尿症と便秘

夜尿症患児の7.0-14.5%に便秘が認められます.健常児では1.4-2.4%に便秘を認めるので,夜尿症では明らかに便秘の合併率が高くなります.夜尿症に便秘を伴う場合には,まず便秘の治療を行います.便秘の治療だけで,夜尿症が改善することがあります.

夜尿症の治癒,予後

「1カ月に1回未満の夜尿が6カ月以上続くもの」を夜尿症の治癒と定義します.治療をすれば,治癒開始後1年で50%,1年半で75%,2年で85%が治癒に至ります.裏返せば,たとえ治療をしても治癒までに1年以上かかるものが50%,1年半以上かかるものが25%はいるので,根気よく治療を続けることが大切です.

10歳未満の方が10歳以上よりも,やや高い治癒率を示します.

毎晩夜尿がある場合には治りが悪く,週に数回の夜尿は治りが良い傾向を示します.

 

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