肛囲溶連菌性皮膚炎とは?

A群β溶血性連鎖球菌(=溶連菌)は,急性咽頭炎を起こし,発熱,咽頭痛,咽頭発赤,発疹などの症状を起こします.また,伝染性膿痂疹(とびひ)の起因菌の約10%は溶連菌で,痂皮性の皮膚病変を生ずることが知られています.このほかに,小児科診療で遭遇する溶連菌による疾患で見逃してはいけないものが,「肛囲溶連菌性皮膚炎」です.

「肛囲溶連菌性皮膚炎」は,肛門周囲の皮膚炎です.肛門を中心に,境界明瞭な,鮮紅色から暗赤色の紅斑を特徴とします.表在性の病変で,ときに亀裂,びらん,出血,落屑などを伴います.乳幼児に好発し,基礎疾患にとしてアトピー性皮膚炎を持つ患者が多いとの報告が目立ちます.高齢者を中心に成人の罹患例もあり,かゆみや痛みがあり,亀裂形成のために排便痛を生じ,便秘を呈する場合もあります.

診断

病変部からの溶連菌の検出により診断します.通常の皮膚細菌培養検査のほかに,咽頭炎用の溶連菌迅速検査キットを用いることも可能です.

治療

溶連菌による急性咽頭炎の治療に準じて,ペニシリン系やセフェム系の抗生物質の内服を行います.完全な除菌のために,通常は10日間の内服継続が必要です.

合併症

溶連菌による急性咽頭炎では,合併症として急性糸球体腎炎やリウマチ熱が起こることがよく知られています.「肛囲溶連菌性皮膚炎」で合併症が起こることは極めてまれですが,数カ月間放置され,急性糸球体腎炎を合併した症例が報告されています.

鑑別診断

乳幼児の「肛囲溶連菌性皮膚炎」は,おむつかぶれや皮膚カンジダ症と間違われることがあります.ステロイド薬や抗真菌薬の外用剤が処方されていることがありますが,これらの薬剤は「肛囲溶連菌性皮膚炎」には無効です.おむつかぶれでは皮膚炎の部位が特徴的で,皮膚カンジダ症では皮膚炎に中心治癒傾向が見られます.「肛囲溶連菌性皮膚炎」は,この疾患を知っている医師には,皮膚病変の特徴から診断は容易です.一方,認知度がそれほど高くないため,まだ多くの患者が見過ごされている可能性が指摘されています.