熱性痙攣とは?

熱性痙攣(ねっせいけいれん)は,主に生後6-60カ月までの乳幼児に起こります.通常は,38℃以上の発熱に伴う発作性疾患(痙攣性,非痙攣性を含む)で,髄膜炎などの中枢神経感染症,代謝異常,その他の明らかな発作の原因がみられないもので,癲癇(てんかん)の既往のあるものは除外されます.

(1)焦点性発作(部分発作)の要素,(2)15分以上持続する発作,(3)24時間以内に複数回反復する発作,の3項目の1つ以上を持つものを「複雑型熱性痙攣」,それ以外のものを「単純型熱性痙攣」と定義します.

熱性痙攣は通常生後60カ月までの乳幼児期の発作と定義されています.しかし,満5歳を越える年長児の有熱時発作についても,年齢以外の定義を満たす場合には熱性痙攣と同様に扱います.ただし,5歳以後に発作を反復した場合や無熱時発作を反復した場合には,癲癇の可能性があります.

熱性痙攣が起きた場合の家庭での対応

(1)あわてない:熱性痙攣は通常は数分間で止まります.命にかかわることは,まれです.
(2)何もするな:口の中に指や箸を入れない(舌を噛むことはない).大声で呼んだり体をゆすったり,抑えつけたりしないでください.
(3)楽な姿勢で:体を横にねかせ,服をゆるめてください.
(4)吐くと危ない:吐きそうになったら体ごと横にして,吐いたものがのどにつまらないようにしてください.
(5)じっと見る:痙攣の様子をよく観察し,時計を見て何分続いているかを確認してください.

熱性痙攣重積状態

長時間持続する発作,または複数の発作でその間に脳機能が回復しないものを「熱性痙攣重積状態」と定義します.従来は30分以上のものを重積状態としていましたが,発作が5分以上持続している場合には,ジアゼパムまたはミダゾラムの静注を行います.いずれも呼吸抑制には注意が必要です.静注以外の方法として,ジアゼパム液剤の注腸,ミタゾラムの鼻腔または口腔投与が有効です.海外では行われていますが,日本では保険適応はありません.これらの投与法は,静脈ラインの確保が困難な小児における治療法として有効です.

熱性痙攣が起きて救急外来などを受診した場合に検査は必要か?

(1)髄液検査は,ルーチンには必要ありません.細菌性髄膜炎が発見される確率は,単純性熱性痙攣では0/704,複雑型熱性痙攣では3/526で,極めて低いからです.ただし,髄膜刺激症状,30分以上の意識障害,大泉門膨隆がある場合には,髄液検査を考慮します.
(2)血液検査は,ルーチンには必要ありません.菌血症が発見される場合もありますが,ほとんどがoccult bacteremia(潜在性菌血症)の状態で経過には影響を与えないからです.全身状態が不良で重症感染症を疑う場合,痙攣後の意識障害が遷延する場合,脱水を疑う場合には,血液検査を考慮します.
(3)CTやMRIなどの頭部画像検査は,ルーチンには必要ありません.発達の遅れがある場合,発作後麻痺が残る場合,焦点性発作(部分発作)や遷延性発作(持続時間15分以上)の場合には,画像検査を考慮します.

熱性痙攣が止まっている場合にジアゼパム坐薬は必要か?

熱性痙攣が止まった直後のジアゼパム坐薬(商品名:ダイアップ坐剤)の挿入は,ルーチンには必要ありません.熱性痙攣の再発は,ジアゼパム坐薬使用群では2/95,不使用群では16/108と報告されています.ジアゼパム坐薬を使用すると,再発予防に一定の効果はあります.一方で,ジアゼパム坐薬により意識レベルの低下や神経学的異常所見がマスクされることがあり,髄膜炎や急性脳症などの発見が遅れてしまう可能性があります.

熱性痙攣の予防

熱性痙攣の既往がある小児におけるジアゼパム坐薬の予防投与は,ルーチンには必要ありません.熱性痙攣は1回のみで終わる場合が70%で,再発率は30%程度だからです.しかし,以下の適応基準(1)または(2)を満たす場合には,予防投与の対象です.
(1)15分以上の遷延発作
または
(2)次のi-viのうち2つ以上を満たした熱性痙攣が2回以上反復した場合
i.焦点性発作(部分発作)または24時間以内に反復する
ii.熱性痙攣出現前より存在する神経学的異常,発達遅滞
iii.熱性痙攣または癲癇の家族歴
iv.12カ月未満
v.発熱後1時間未満での発作
vi.38℃未満での発作

ジアゼパム坐薬は,37.5℃を目安にして,1回0.4-0.5mg/kg(最大10mg)を肛門に挿入し,発熱が持続していれば8時間後に同量を追加します.鎮静・ふらつきなどの副反応が出現する場合には,投与量を少なめにします.

ジアゼパム坐薬の予防投与は,最終発作から1-2年,もしくは4-5歳まで行うのがよいと考えられていますが,明確な基準はありません.

*ジアゼパム坐薬と解熱剤の坐薬を同時に使用する場合には,「ジアゼパム坐薬」→(30分おいて)→「解熱剤の坐薬」です.

解熱剤

アセトアミノフェン,イブプロフェン,ジクロフェナクなどの解熱剤を用いて熱を下げても,熱性痙攣を予防できません.熱性痙攣予防のための解熱剤の使用は推奨されません.

鎮静性抗ヒスタミン薬とテオフィリン製剤

熱性痙攣の既往がある場合には,鎮静性抗ヒスタミン薬やテオフィリン製剤は熱性痙攣の持続時間を長くする可能性があるため,これらの薬剤の使用は推奨されません.

ワクチン

熱性痙攣の既往があっても,すべてのワクチンの接種を受けることができます.熱性痙攣後,当日の体調に留意すれば速やかに接種を受けてかまいません.疾病予防の観点からワクチン接種はなるべく早期に受けた方がよいので,熱性痙攣とワクチン接種の間隔は長くても2-3カ月程度に留めてください.

再発予測因子

熱性痙攣の再発予測因子は,(1)両親いずれかの熱性痙攣の家族歴,(2)1歳未満の発症,(3)短時間の発熱-発作間隔(概ね1時間以内),(4)発作時体温が39℃以下,の4つです.再発予測因子をもたない熱性痙攣の再発率は約15%です.一方,再発予測因子を有する症例を含めた熱性痙攣全体の再発率は約30%です.

熱性痙攣と癲癇

熱性痙攣の既往のある小児が,後に誘因のない無熱性発作を2回以上繰り返す,すなわち癲癇を発症する確率は2.0-7.5%で,一般人口における発症率(0.5-1.0%)よりも高いです.しかし,熱性痙攣の90%以上は癲癇を発症しないので,過度な心配は無用です.

熱性痙攣後の癲癇発症関連因子は,(1)熱性痙攣発症前の神経学的異常,(2)両親・同胞における癲癇家族歴,(3)複雑型熱性痙攣,(4)短時間の発熱-発作間隔(概ね1時間以内),の4つです.(1)-(3)の因子に関して,いずれの因子も認めない場合の癲癇の発症率は1.0%で,一般人口と同等です.1因子認める場合は2.0%,2-3因子の場合には10%です.(4)がある場合には,その後の癲癇発症の相対危険度は約2倍です.

脳波検査

単純型熱性痙攣を起こした小児に対して脳波検査をルーチンに行う必要はありません.複雑型熱性痙攣では癲癇放電の検出率が高いことが報告されていますが,癲癇発症の予防における臨床的意義は確立していません.